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お知らせ&事例紹介

ホテル受付業務へのロボット導入FS(実現可能性調査)
株式会社水口センチュリーホテル

 

1.ロボット導入FSのきっかけ

 水口センチュリーホテルは、滋賀県甲賀市のビジネスホテル。アウトレットや忍者の里、水口工業団地の近くに位置し、多くの家族連れやビジネスで利用されている。

 近年、滋賀県ではチェーンのビジネスホテルが増加傾向にあり、当社のような中規模のビジネスホテルが生き残りを図るのが難しくなっている。そこで、フロントにロボットを導入することで他社と大きく差別化し、当ホテルの知名度を高めていきたいと考えた。

 さらに関西地区には、アジア圏を中心に外国人観光客が増加している。当ホテルには英語や中国語が堪能なスタッフも在籍していますが、それ以外の言語に対応することは難しく、混雑時には外国語対応が可能な人材が不足する場面も多い。今後ロボットを活用することで、それらの問題の解決も見込めると考えた。

 しかし当社のような中規模ホテルのフロント業務のロボット化は前例がなかった。そこで、ロボットの導入にあたり、まずはFS事業を実施し、ロボット化実現の可能性を検討することになった。

 

2.ロボット導入FSの内容

本FS事業では、予約確認、案内等のホテルフロント業務について人型ロボットが対応を行う可能性を検討した。

 まず、フロントサービスにかかわる業務分析を行い、ロボットが備えるべき機能要件をまとめた後に、ロボット化の範囲の検討、投資対効果の評価を行った。

 検証の結果、ロボットの実現性は十分あり、特に業務効率化に有効であることがわかった。さらに現在の課題として、フロント業務システム、経理システムなどシステムの充実が必要であることも認識できた。

 

≪取組内容≫

ホテルフロントでの、「受付」「案内」「予約確認」「決済」業務のロボット化の可能性を検証した。具体的な取組は以下の通りである。

1)フロントでの作業の人員・時間・コスト面の負担について分析し、ロボット導入の目的及びメリットを明確にした。

2)ホテル利用客が、フロントを利用する理由を分析した。

3)フロントでの作業に必要となる要件について細かく分析し、ロボットが備える機能要件をまとめた。

4)ロボットの概要仕様書を作成し、業務効率化、省人化、コスト削減等の可能性を検討した。

5)ロボットを導入した場合の費用等を見積もった。また、ロボットの稼働の効果などをシュミレーションし、投資対効果を評価した。

 

≪実証課題≫

1)「受付」「案内」「予約確認」「決済」の完全自動化の範囲

2)遠隔地にいるスタッフが、ロボットを介しお客様への案内を行うための通信方法

3)予約確認システムとロボットとの連動方法。残室確認、予約登録・変更・取り消しのロボット化の範囲

4)決済システムについての検証・調査

5)話題性があり、なおかつ親しみやすく、安全性の高い外観の検討

 

≪実証結果≫

1)完全自動化の範囲

「受付」「案内」「予約確認」については、一部をロボット化する。一方「決済」については、自動ではなく決済端末(フロント側)を使用し、人の仕事を自働化する方針とする。

2)遠隔地からの通信方法

各ホテルにchatwork のライブチャットを導入し、マルチリンガル対応を実現させる。

 

【chatworkによるネットワーク】

3)予約確認システムについての検討・調査

他旅行・ホテルサイトと連動した空室管理システムを構築し、お客様がロボットに搭載された端末やweb上から空室状況や予約状況を確認できるようにする。

 

4)決済システムについての検証・調査

決済システムの自動化は行わないが、2分以内のフロント業務実現のため、人の仕事を補完すべく、決済機能を充実させていく。

 

5)ロボットの外観の検討

ロボットの外観については、VRを活用して、立体映像を透明ガラス映し出しだすなどし、ソフトバンクショップのペッパーなど既存のロボットと差別化を図っていく。

 

【ロボット外観案】

 

 

6)その他導入の成功ポイントや教訓

本ロボット導入FS事業の成功ポイントは、人とロボットの役割を明確に切り分けられた(人は、きめ細やかな接客対応、ロボットは、定型化可能な接客対応)ことである。その上でロボットに求める要件を決定したために、高い顧客満足獲得につながるロボット及びシステムの開発が可能になった。

一方で、ロボットの役割を限定したために、他社の接客ロボット(ペッパーなど)と差別化をはかることが難しくなった。実証に際しては、VR(バーチャルリアリティ)を搭載するなどし、外観に工夫を凝らすことで、他に類を見ないロボットの導入を目指していきたい。

 

≪ロボット導入前後のイメージ≫

 

3.ロボット導入FSを終えて

ホテルのフロントロボットについて、話題性、業務効率化、多言語対応という観点から実証可能性の検討を行った。検証を進めていくうちに、多言語対応について完全に自動化することが困難であると判明し、ホテルとSIerとで協議した行った結果、ロボットに搭載された通信システムを用い、「人」が遠隔地から行うこととなった。この方法であれば、現実的なコストでロボットの製作を行うことができ、さらに、言語や、属性、ニーズに合った顧客対応を行うことができる。

 また、業務効率化については、人とロボットの役割を切り分けて、それぞれの強みを活かしていく方法を考えた。人はきめ細やかな接客対応、ロボットは定型化可能な接客対応を行っていく予定。 このように人とロボットが融合し、今までにない新たなサービスを提供することで、当ホテルは特長あるホテルとしてさらなる飛躍を遂げてきたい。

 FS事業前は、サービス分野へのロボット導入は一部の大企業が行うものと考えてきたが、人の力とロボットの力を組み合わせることで、中小企業でも十分に活用が可能であることがわかったという。稼働後は、継続的に改良を行い、ロボットの精度を高めていくとともに、当社が経営する他の2ホテル(新設予定の京都府内のホテルを含む)についても導入を検討していく予定である。

 

4.ロボットユーザーからひとこと

当ホテルは皆様にご愛顧いただき、昨年開業25周年を迎えることができました。

 しかし、大手のホテルの開業による競合の増加や限られた人員でのフロント業務への対応など様々な課題も抱えております。

そのようななかで、ロボット導入の話が浮上しました。当初は、ロボットといわれても現実味がなく、また、ロボットに接客を任せることでホテルのサービス品質が低下するのではないかという懸念もありました。

 しかし、今回のFSを通じ、ロボットと人、それぞれの良さを生かし、現在抱えている課題を解決していけるのではないかと思うようになりました。今後は「ロボットのいるホテル」として、皆様に一層親しまれるホテルを目指していきます。

 

5.ロボットシステムインテグレータからひとこと

今回のFSでは、専用端末を搭載した人型ロボットでホテルフロントにおける予約確認、決済、案内等を行う可能性を検討しました。

 ホテルのフロントでのロボットの活用は、関西地区では前例がありません。また、通信システムを搭載し多様な言語への対応を行うのも他に類を見ない新たな取組みです。実証化されれば集客力が必ず向上すると確信しています。

 また、水口センチュリーホテル様には、ロボット導入にあたり、業務手順の見直しやマニュアルの整備もしていただいています。このことで、既に業務効率の向上やサービス品質の安定が実現しつつあるのを感じています。

 次は、いよいよロボット導入です。関西初のホテルフロントロボットの誕生がいまから楽しみです。